陸地から海へ流出するプラスチックゴミに関する研究報告
(2015年3月10日)
2月13日発行のアメリカの科学誌サイエンスに、「陸地から海へ流出するプラスチックゴミに関する研究報告」が掲載されました。
サイエンスは、世界的にも最大級の学術団体、アメリカ科学振興協会(American Association for the Advancement of Science; AAAS)が発行する科学誌です。 この研究報告は、ジョージア大学、カリフォルニア大学、ノースカロライナ大学などアメリカとオーストラリアの7つの大学と研究所による共同研究をまとめたもので、これまで実施されることの無かった広範囲の国々と、それぞれの国々の内陸部から海に流出するプラスチック量を具体的に数値化したことに大きな意義があります。
宮古島キッズネットではサイエンス誌に掲載された報告書を翻訳し、その概要をご紹介します。
「陸地から海へ流出するプラスチックゴミに関する新研究報告」
これまで、海洋環境におけるプラスチックゴミに関しては多くの調査報告がありますが、陸地から海へ流出するプラスチックの量に関しての世界的規模での調査は、なされていませんでした。 1975年には船舶、軍事作戦、船舶事故により発生する年間の海洋へのゴミの流出物の総量を580万トン〈MT〉と推定しました.
海洋におけるプラスチックに限定した汚染の最初の報告は、1970年代初めに科学文献に登場しました。 しかし40年以上たっても、海洋環境に流出するプラスチックゴミの厳密な推定量と流出経路に関しては明らかにされていませんでした。
海上での船舶からのプラスチック廃棄は禁止されていますが、廃棄行為はいまだに行なわれています。 また、海洋ゴミの80%は陸地に由来するとも言われていますが、この推定はこれまで十分に実証されておらず、陸地から海洋環境に流出するゴミの全体量を把握できる状況ではありませんでした。
今回の調査では世界中の固形廃棄物、人口密度、経済状態などのデーターを関連付けることで、陸地から海に流れ出すプラスチックゴミの全体量を見積もりました。
また、人口規模とプラスチック容器やプラスチック製品の購入量、どのように廃棄されるかの動向調査と自治体などの廃棄物管理能力を調べることで、どの国が大量のプラスチックゴミを海に流出させているかを究明することが出来ます。 その結果、2010年、世界の192カ国の海に接する国々では2.75億トンのプラスチックゴミが発生し、そのうち480万~1,270万トンが海へ流出したものとみられます。
国別ランキングとおおよその放出量は以下のようになっています。
1. |
中国 |
132 |
~ |
353万トン |
|
2. |
インドネシア |
48 |
~ |
129万トン |
|
3. |
フィリピン |
28 |
~ |
75万トン |
|
4. |
ベトナム |
28 |
~ |
73万トン |
|
5. |
スリランカ |
24 |
~ |
64万トン |
|
6. |
タイ |
15 |
~ |
41万トン |
|
7. |
エジプト |
15 |
~ |
39万トン |
|
8. |
マレーシア |
14 |
~ |
37万トン |
|
9. |
ナイジェリア |
13 |
~ |
34万トン |
|
10. |
バングラデシュ |
12 |
~ |
31万トン |
|
11. |
南アフリカ |
9 |
~ |
25万トン |
|
12. |
インド |
9 |
~ |
24万トン |
|
13. |
アルジェリア |
8 |
~ |
21万トン |
|
14. |
トルコ |
7 |
~ |
19万トン |
|
15. |
パキスタン |
7 |
~ |
19万トン |
|
16. |
ブラジル |
7 |
~ |
19万トン |
|
17. |
ビルマ |
7 |
~ |
18万トン |
|
18. |
モロッコ |
5 |
~ |
12万トン |
|
19. |
北朝鮮 |
5 |
~ |
12万トン |
|
20. |
アメリカ |
4 |
~ |
11万トン |
|
|
|
|
|
|
|
今回の研究発表で注目すべきことは廃棄物管理基盤の改善がなければ、陸地から海へ流出するプラスチックゴミは2025年までにさらに莫大な量になり、最低でも年間9,000万トン、中間レンジで 1億5千万トン、最大では約2億5千万トンになるものと予測しています。
つまり、10年後に世界の海に流出するプラスチック総量は、対策を講じない限り最低でも現在の20倍となるのです。
参考文献:
Plastic waste inputs from land into the ocean
Jenna R. Jambeck, Roland Geyer, Chris Wilcox, Theodore R. Siegler, Miriam Perryman, Anthony Andrady, Ramani Narayan, Kara Lavender Law
Sciencemag.org 13 FEBRUARY 2015 ・ Vol. 347 ISSUE 6223/768/suppl/DC1
|
ここまでが、「陸地から海へ流出するプラスチックゴミに関する研究報告」の概要です。
沖縄で暮らす私たちは、国際的に見ても最もプラスチック廃棄量の多い中国からわずか450km から650kmというごく近くに住み、漂流ゴミの太平洋大循環コースで考えると、ほぼ川下流出海域という環境で生活しています。
放出量が2025年には20倍になるとすると、宮古島の海岸への漂着量も比例して増加する事を想定し、今から数々の対応策が必要となります。
これまでのような、市民ボランティアの善意で片付けるというのは物理的に不可能な量になり、間もなく各自治体での処理能力を超えてしまい、膨大な新処理施設の建設と運用費を負担し続ける時代となります。
そのような将来負担を少しでも軽くするための最も大事な対応のひとつが川上対策です。 川上対策とは、川の上流から河口にいたる地域で川にゴミを投げ捨てる事や、川につながる水路にゴミを放置しない事をいいます。
沖縄県民は、河川からの流出量の多い中国に対し川への投棄を減少させるための積極的な働きかけを行うよう県や国に求める必要があります。 また、沖縄では中国と直接民間チャンネルを持つ人や組織も多いと言われていますので、沖縄の美しい海と漁業、環境、県民の健康を守るために、中国各地での川へのゴミの投棄を減少させるための呼びかけと実施を求めて直接働きかけを行って頂きたいと考えます。 |