宮古島の方言 宮古島キッズネット
 


 スムーズな意思疎通を継続させるメカニズムの存在
 

 宮古島の方言の変化や減少傾向を数値化させ、分析する独自のアプローチ MHRC により将来予測を行う立場から、いつも強い関心を持って見るのが国際的規模で消滅危機言語に関するリサーチを活発に行っている ケンブリッジ大学とUNESCOの 共同研究 「World Oral Literature Project ( 世界口承文学プロジェクト)」 と、UNESCO の発行する 「Atlas of the World's Languages in Danger(消滅危機言語世界地図)」 です。

Courtesy of: publishing.unesco.org
 特に 「消滅危機言語世界地図」 は、かなり高い頻度で最新データを発表していますので、消滅プロセスの研究には貴重な資料を提供してくれます。

 右のデータは、カナダ東部の先住民族ミクマクの言語に関する2015年11月9日の更新情報です。

 また、世界口承文学プロジェクトは世界中から情報収集をかねてフィードバックを受け付けていますが、その中に 「共通言語と方言を巡る位置づけのヒエラルキー」 があります。
Courtesy of: Moseley, Christopher (ed.). 2010. Atlas of the World’s Languages in Danger,
3rd edn. Paris, UNESCO Publishing. Online version

 このヒエラルキーに関し、私たち MHRC では世界の言語学上で使われているヒエラルキーの定義とは異なるテーマとして、「方言と共通語を合わせて使用している期間中の特徴的な現象に着目しています。 それは、相手の方言の理解度を無意識のうちに階層化(但し優位順序や差別化の意味を含まない)し、その上で方言の同調機能を有効化させて共通言語と方言を取り合わせ、スムーズな意思疎通を継続させるメカニズムの存在©」です。

 つまり、会話中に話し相手の方言の理解度レベルを推し量り、自分の話す方言レベルを相手の理解領域幅に合わせてファインチューニングするという、方言の変容過程にあって特徴的なコミュニケーションプロセスがあり、このメカニズムの中にも宮古島の方言の存続期間を延長させるための多くのヒントがあります。

  
宮古島キッズネット MHRC リポート
©2016 Miyakojima Kids Net

 


 宮古島の方言の調査研究に、海外のデータや情報がなぜ必要か?
 

 宮古島の方言の調査研究に、海外のデータや情報がなぜ必要か? との質問があります。

 私たちは、宮古島の方言をカテゴリー的にも、感覚的にも 「消滅危機言語」と認識することなく、今後も長期にわたり、宮古島に生れ育つ子孫のためのアイデンティティであり、コミュニケーション ツールとしての物理的な評価が薄れても、思想、情操を含む総合的文化価値をさらに高めるための言語として存続することをめざしています。 

 MHRC REPORT の2でも報告した、「一般的傾向である方言の混ざり合いなどによる再構成の動向などを多角的に捉え、失われる言語としてではなく、これまでのように揺れや淘汰が繰り返される中で、新たなコミュニケーション・ツールとして生起・発展する可能性を統計学的アプローチにより探るための調査・研究をおこなう©」 段階にあり、そのためには記憶資産や、記録資産としてのデータ収集とは全く異なる分野でのデータ収集が必要となります。

 具体的には、方言をそれぞれの時代や共通語表現に発展的融合させていき、どの時代にあっても宮古島では方言に対する関心と評価が薄れないための方策を探り、定着化させるためのノウハウの蓄積です。

 私たちがリサーチを行う中で注目している消滅危機言語の中に、ロマ(ロマニー)語があります。
歴史的には、発達の起源はいつ頃だったのかはっきりしていませんが、7世紀頃インドに住んでいた遊牧民族(ジプシー)が使用していた言語で、13世紀のモンゴル帝国の勢力拡大にともない、当時インド北部からアフガニスタンにかけ分散していたジプシーたちは、モンゴル軍の攻撃から逃れるように、西へ西へと移動し、イラン、中東、東欧、西ヨーロッパ、北欧まで小さなグループに分かれて大移動しました。

 その移動過程にあって、ジプシーの人々は安全や仕事、食料の確保のためにロマ語に地域の人々の言葉を取り込み、安全が確保された地域で遊牧生活を続けました。 このライフスタイルは、今でも中東からヨーロッパ全体で約400万人のジプシーに受け継がれています。
もちろん若い世代の多くが、いまでは遊牧生活への偏見や差別的な扱いを嫌い、安定した生活を求めて都市部へ定住しています。

 「ヨーロッパ地方言語・少数言語保護憲章(ECRML)」は、EU(欧州連合)の20ヶ国で批准され、98の少数言語が評議会でのモニター対象となっています。 今年5月12日の ECRML 報告では、ノルウエーでは今でも約2000人、スエーデンでは約300人がロマ語を使っていることがわかりました。この二つは、ロマ語集団としても特に言語使用人口の少ないコミュニティであり、それぞれが独自性の高い方言をもっていることから各国の研究機関が存続のために様々な取り組みを行っています。

 ロマ語の発展や変化が、私たちの 「宮古島の方言をどのように生かし続けるか」 の研究の参考になるのは、ロマ語を話すジプシー同士の分断・合併に加え、それぞれの通過地でトルコ語、イタリア語、ロシア語、フランス語、スペイン語、さらにスエーデン語、ノルウエー語などの影響を受け、多くの異なったロマ語方言を生み出した過程と現在の使用状況を調査することで、宮古島の方言の存続のために応用可能な多くのヒントが得られるからです。

Romani family, Courtesy photo edited by Harold Wheeler, LND 1936
GYPSIES OF THE WHITE MOUNTAINS
Bruce D. Heald, PHD
Copyright: Bruce D. Heald
なおロマ語の研究は、ほぼ世界全域で行われており膨大な資料がありますので、興味のある方はネットで図書検索をしてみてください。
   
宮古島の方言と日本語本土の言葉との発展的融合に関する、宮古島キッズネット独自の研究フイールドがあります。
万葉時代の言葉は、沖縄本島の一部や宮古島、石垣島、与那国島の方言にも残っているようですが、どのようにして伝わったのかに関し宮古島キッズネットは、当時先島地域と奈良や京都との交流があったからではなく、Marija Gimbutasのクルガン仮説(Kurugan hypotesis)" の説得方式に似た状況で伝わったと考えます。
つまり、「万葉時代の言葉や語法がじわりじわりと隣接する地域へと伝わり続け、数百年後には遥か遠くに離れた宮古島や先島地域の方言にも万葉の言葉が交わり使われるようになった。 しかし、当時の人々はその語源がどこにあるのかについては誰も知らなかった 。 また、本土の経由地には新たな文化的伝播の波が次々と押しかけたので万葉の時代のものは消滅していったが、先島では地理的要因から伝播頻度が低く、他の時代の文化的受容総量が少ないので残る可能性が高まった (©2014 Miyakojima Kids Net) と考えます。

なお、「宮古島の方言には、上代(飛鳥時代から奈良時代)といわれる万葉の言葉が残っている」 ことに関して、今でも多くの研究者が調査を続けていますので、図書館やネット上で読むことが出来ます。
  

宮古島キッズネット MHRC リポート
©2016 Miyakojima Kids Net
 

 
宮古島の方言の使用状況を可視化する
 上のチャートは、宮古島キッズネットが作成した宮古島の方言の使用状況を可視化させるための、活用度マトリックスです。 宮古島キッズネットでは、現在このマトリックスの精度を高めるためにより多くのデータを収集中です。

 ここにあるのは、宮古島生まれの各年代の市民10人が日常的に話しをする宮古島生まれの親族や友人が、それぞれどの程度方言を理解していると思うかを座標上に反映したものです。 このチャートは、特徴を解説するためのサンプル表示です。 そのため、グリッド数が 56 x 56 ととても大きくしてありますが、実際の分析用はグリッド数を10倍に設定してあり、より正確に現状を反映させることができます。

 ここにある僅か10人分のサンプルデータからも、既に宮古島の方言の現状と特徴が良く見えています。 ひとつは、宮古島の方言を愛する人々にとって朗報ですが、方言を理解する程度がゼロから100%の間に隙間が無く、ほぼ同一軸上に集中しています。 つまり、方言を理解する人がいなくなる空洞化現象や方言を理解できる人々のつながりが途絶える孤立化現象がまだ始まってはいないようだ、ということです。

 また幸いなことに、現在は高齢者層と理解度の高さが比例しており、結果として右肩上がりを維持しており、軸の倒れこみを支えてくれています。 しかし、年代層と理解度の割合が比例しており、このままでは軸の倒れこみを支えることはできず宮古島の方言は将来確実にどの年代層も理解度ゼロに近いところにドットが集中する ”倒れこみ現象” が顕著となり、日常の会話から消えていくことを示しています。

 しかし、方言を理解する人々があちらこちらの年代層でのみ確認できるという空洞化現象が始まっていない今なら、希望を持って試すことが色々ありそうです。

 宮古島キッズネットでは、クラスター上でのデータ収集を続けています。 データ数が予定数となり、マトリックスの作成と総合的分析が終了した段階でその結果を公開します。 なお、マトリックス上の座標値を決定する理解度の算出は、宮古島キッズネット独自のパラメター(基本推奨値)を用いています。
  
宮古島キッズネット MHRC リポート
©2016 Miyakojima Kids Net
 


方言を言語としてだけの位置づけで考えるのではなく、文化としてより多くのステージで活かす

 今年も宮古島方言大会が行われましたが、高い観客動員実績を見ても宮古島の方言が、今も多くの島民の間で立派にコミュニケーション手段として機能していることに喜びを感じます。

 現代の方言を言語として評価する時、残念ながら消滅危機言語とのカテゴリーで扱われる事が多くなりましたが、宮古島の方言も言語学上では同じ評価で扱われているのかもしれません。

 「方言を残す」ということは、共通言語主流の現代にあって、私たちの祖父母のようにバイリンガル、つまり二つの言葉を巧みに使い分けていた時代のように、私たちの子孫に方言とユニバーサル(共通)言語を複層化したコミュニケーション手段として持たせ続けることは不可能です。

 方言を長く使い続けるための延命措置 (Life-Sustaining Treatment) は、方言大会や公の方言関連イベント、テレビや新聞などのメディア、教育機関、地域活動、NPO活動、個人による出版やネット、ブログ、ソーシャルメディアなど、地域のあらゆるレベルにおいて相互補完しながら多様な方言の紹介を長期間絶やすことなく続ける必要があります。

 しかも、方言を言語としてだけの位置づけで考えるのではなく、文化としてより多くのステージで活かしていくことで、言語としてのライフスパンを伸ばしていくことができます。 統計学的アプローチから見ると、方言も様々な領域で多く使われ、露出度が高くなるほど他の場面でも使われる頻度が高まり、人々の認識の中に長く留まります。 仮に言語学上の評価がどうであっても、その予想をくつがえす文化的発展を続けるポテンシャルが宮古島の方言にもあります。

 但し、このことで確かな成果を上げるための大原則があります。
それは、「他の人が試みている手法を批判したり、その動きを留めたり妨害しない」 ということです。 百年後にその手法がどのような良い結果に結びついているかは誰も予測できません。

 それがどんなにささやかな試みであったり、仮に非論理的に見えたり、非現実的と思える手法や言語学者には受け入れられない方法であっても、あくまでも今の認識の範囲で判断しての評価にすぎません。
多くの新時代を作り上げた手法や発見も、それ以前に生きた時代の人々や当時の学者・研究者と言われた人々にとっては想定外であったのと同じことです。

 「方言を言語としてだけの位置づけで考えるのではなく、文化としてより多くのステージで活かしていく」 について宮古島の方言に関するリサーチ クラスターを通じて考えるとき、方言や少数民族の消滅危機言語に関し参考になる作家の象徴的な言葉があります。

 日本の一部の出版物ではEmil Cioran による記述とされていますが、Exile and the Politics of Exclusion in the Americas (Edited by Luis Roniger, James N. Green and Pablo Yankelevich) の中で Robert Tittler が、「作家にとって祖国とは、地理的な問題ではなく、生まれた場所で使っていた言語そのものである。」 と言っています。 つまり、方言や民族の言葉は言語学上あるいは学問としての言葉でなく、思想そのものであるということです。

方言が生き続けることで、その地に住む人々が長い歴史の中で培った独自の高い文化性を伴う想像力、判断力、その地で生まれた者としての確かなアイデンティティを維持することできます。

先ほど触れた Emil Cioran ですが、自分の故郷の言葉について彼の面白いコメントがあります。 哲学者でエッセイストであったシオランは、ルーマニアの中西部ラシナリーで生まれ育ちましたが、執筆活動はフランスで行っていました。 そのシオランが生れ故郷の言葉について聞かれたとき、「自分が生まれ育った地方の言葉以外で物事を伝えるのは、辞書を片手にラブレターを書くようなもので、思いを言い表す的確な言葉を探し当てることができないもどかしさがある」 と言っています。

宮古島の方言を残したいと活動する人々にとっては、活動のモチベーションとなる多くのヒントが含まれている一言です。

 方言を単に意思伝達の道具(コミュニケーション・ツール)として考えると、存続のためには膨大なエネルギーが必要となりますが、方言の持つ地域の文化的エッセンスを活かす活動を続けることで、方言は言語としての機能と共に 「その地域に生まれ育った人々全員の思想そのものであり、アイデンティティである」、との認識も高まり、宮古島の方言に新たな息吹きをもたらすことになります。

  
宮古島キッズネット MHRC リポート
©2012 – 2016 Miyakojima Kids Net
 

 
私たちは、宮古島の方言をどこまでつないでいけるのでしょうか?
 

宮古島の方言に関するリサーチ クラスター (MHRC - マーク) の目的

 このリサーチ クラスターの目的は、宮古島の方言に関する情報を複合的に扱い、将来の宮古島の方言の位置づけや社会構成とのかかわりの変化を新しいアプローチにより長期にわたり追跡調査するためのものです。

 また、一般的傾向である方言の混ざり合いなどによる再構成の動向などを多角的に捉え、失われる言語としてではなく、これまでのように揺れや淘汰が繰り返される中で、新たなコミュニケーション・ツールとして生起・発展する可能性を統計学的アプローチにより探るための調査・研究システムです。
 
消滅危機言語と方言
 ユネスコ(国際連合教育科学文化機関 UNESCO) の調査によると、現在世界に6,000から7,000の言語があるといわれていますが、100年後にはおそらく90%の言語が消滅するであろうといわれています。 この中には、同一部族間でも明確に識別できる異なる言葉(方言がさらに発展し、相互理解が難しくなるほど発達した諸言語ともいえる方言)も含まれています。

 ユネスコでは、これら消滅する可能性のある言語を、世界で絶滅の可能性のある植物や生物をリストアップしたレッドデータブックと同じように、消滅危機言語としてレッドデータブックを作成しています。
Moseley, Christopher (ed.). 2010. Atlas of the World’s Languages in Danger, 3rd edn. Paris, UNESCO Publishing

 宮古島の方言は、レッドデータブックで言うとどのあたりに位置するかの判断は、研究者によってかなりの差がありますが、いずれにせよ消滅危機の度合いは毎年変化しています。 そして、このまま何も対策をしなければ、間違いなく消滅危機のレベルは上がり、遠い将来には消滅へと向かっていきます。
 
消滅危機度の変化に関する長期の調査
 現在の宮古島の方言の消滅危機度を知るには、一般的にはサンプリング調査による統計のまとめ方もありますが、方言に関するサンプル調査は、どの方言単語や方言語彙を標本に使うかの選定段階ですでに偏りが生じていますので、統計としてまとめ上げることが出来ても、全体を反映させたことにはなりません。 また、危機度は年ごとに変化するので、特定の一時期におけるサンプル統計では実態との隔たりが起きます。

 宮古島キッズネットでは、このような一部の抽出されたデータを分析するのではなく、生きたコミュニケーションツールとしての機能度をより高い精度で知るために、調査対象の母集団である地域に住む人々の体感温度と同じような感覚、つまり島で暮らしていて実感する体感指数をまとめることで、実態との偏りのより少ない調査方法で消滅危機度の変化に関する調査を長期にわたり続けていきます。
 
宮古島キッズネットによる宮古島の方言の定義
 宮古島の人々にとって、方言とはどのようなものなのでしょうか?

1.他の地域との明確な識別材料としての方言
2.地域住民一体化のための方言
3.そこに生きた人々の気質を受け継ぎ次世代へとつなぐための手段(ツール)としての方言
4.家族のルーツがそこにあることの証明である方言
5.個々の存在の根源としての方言
6.絶海の地で生き続ける能力・英知・精神を培ってきた誇りとしての方言
7.血統が途絶えることなく続いた証明としての方言
8.宮古島という唯一性や独自性の証明である方言
9.島の歴史や風俗が織り込まれた語り部としての方言

 方言の定義は一つでなく、形成過程が多様であるように、また地域によって方言の発展の歴史が異なるように、その意義や方言を使う地域住民にとっての重要度、結びつきの強さにも差があります。 上記の定義は、宮古島キッズネットが方言のデータベース作成段階で確認できたもので、これから先さらに増えることも考えられます。
 
宮古島の方言に関する長期プロジェクトの基本概念
 宮古島キッズネットによる宮古島方言リサーチクラスター (MHRC - マーク) では 、研究成果を個人や研究グループ、ある時代の行政担当者などに特定することなく、世代を越えた宮古島の人々の連携による長期間の研究努力が総合的な成果につながる開発方式を採用しています。

 具体的には、長期にわたり継続・発展させるために 「ある一時点」 の研究結果に留まることなく、常にオープンソースによりノウハウをデータとともに全て次世代に送り渡し、リレー開発でその時々の結果を出し発展を続ける方式です。

 このリサーチクラスター (MHRC - マーク)は、宮古島の方言を大切にしたい人々が時代の壁を越えてチームワークを組み、共同開発するドリームチーム・プロジェクトです。
  
宮古島キッズネット MHRC リポート
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宮古島の方言に関する、宮古島キッズネットの編集方針について
 

 宮古島の方言の掲載に関し、島内の皆さまより 「各地域の言葉が混ざり合っており、分類ができていない」 とのご指摘も頂いておりますが、これらのご指摘内容に関し、宮古島キッズネット 運営管理部では、以下を編集の基本と考え、方言の紹介を行っています。

 たしかに、宮古島の方言について話しを聞く時によく言われるのが、「それは、この地区の言葉ではない」 ということです。 宮古島は、小さな島でありながら集落一つ隔てるだけで違う言葉、異なる表現が使われるという、言語学者にとっては魅力的な土地であり、研究する人々にとっては厳密な分類が学術上重要なポイントとなります。 

 しかし、方言は宮古島に限らず時代とともに変化する集合の移動や地域住民集団の構成要素の変化、外部からの移入者比率などの影響を受けながら “揺れ” を繰り返し、変革を続ける流動性の高い言語表現です。 離島という、物理的には都市部から離れたコミュニティであっても、文化的独自性を維持していくのがますます難しくなる時代を迎え、方言もユニバーサル化、標準化傾向の中でその多くが消滅していきます。

 宮古島キッズネットが、これまで掲載を行ってきた宮古島の方言に関しましては、地域別に分類した方法ではなく、宮古島各地よりの移入人口の集中する宮古島市内の多くの人が  「聞いたことがある」、 「意味がわかる」、 「家族や知り合いが、今でも使っている」  というように、大衆による認識度の高い方言、さらに内容を理解できる人口の多い言葉を中心に紹介しています。

 その理由は、移入地域別の人口比の高い地区の方言が宮古島市街地などの人口集中地区でより多く使われていることや、民謡に歌われているなどで、島民全体に “なじみ” や “認知度” が高い方言が相対的にこれから先もより長く使い続けられる可能性の高い言葉であり、今後も宮古島各地の方言のなかでも、「将来も、より長期にわたり宮古島の言葉としての特性を維持し、使い続けられるであろう言葉」 と考えられるからです。

 宮古島キッズネットの扱う方言の位置づけは、「生きたコミュニケーション・ツール」 としての方言であり、編集にあたっては集落により異なる独自表現を持つ宮古島の方言を環境適応学的アプローチで行い、宮古島キッズネット独自の調査・研究テーマである 「実用表現用語として、域内で今後共通語化すると思われる宮古島の方言単語 (Copyright ©2014)」 のためのリサーチです。 

 また、社会統計学上の視点から宮古島の方言のうち将来も日常語として長く残るであろうと思われる言葉のデータベースを作成中です。 なお、これら社会統計学上のコンセプトに基づく方言単語の選択には、あわせて紹介することで関連付けられた方言がより長く記憶され、使われ続ける効果を求めるため、将来は認知バイアスとして処理されるであろう、現在あまり使われていない単語も一部含まれます。

 “揺れ” と “変化” を方言の前提として捉えた時、今後長く生き残る可能性を持つ方言単語に共通する特性があります。 それは、域内の他の地域の方言単語や共通語の中にスムーズに織り込みやすく、しかもその単語を使うことにより宮古島の人々にとって共感性が高まる方言表記です。 社会統計学上、これらの方言単語が母集団を形成し、しかもその母集団に加えられる単語が多ければ多いほど、方言は今後も長く宮古島の人々の間で使われ続けることになります。

 宮古島のすばらしい方言を、単に将来の歴史的記録上の文化遺産としてしまわないためにも、「方言は時代背景や環境変化に影響され、その姿を変えていくもの」 という現実をふまえ、その上で時代や住民環境の変化の中にあっても、着実にコミュニケーション手段として受け継がれていくための方策を考えるのが、長い宮古島の歴史の中でも方言に代表される地域言語中心の生活から、共通語というユニバーサル言語へと移行する過渡期に生きる私たちの責任と考えます。

 宮古島キッズネットは、地域特性を持つ魅力的な表現法として、どれ程多くの宮古島の言葉を人の心をつなぐ、命をもつ言葉として未来につないでいくことが出来るかを考えるとともに、宮古島の方言に興味を持つ子どもをたくさん育てていくための現実的なアプローチを究明することが使命と考え、今後もプラットフォームを通して構築していきます。

  
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