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おそらく、日本で最後のバッタの大群攻撃を受けたのが宮古島です。
1928年(昭和3年)5月、フィリピンのルソン島でバッタが大量発生し、台湾と石垣島、宮古島にも飛来して農作物に大きな被害が出ました。

大量発生したのはトノサマバッタです。 台湾での観察記録によると、小さなグループでも30mくらいのかたまりとなって地上2mほどの高さを水平飛行し、次から次へとやって来て農作物を食い尽くしてしまいました。また大きなグループでは、通り過ぎるだけで2時間もかかるほどの大群もあったそうです。

当時の調査で分かったことは、フィリピンで発生したバッタの大群はルソン島より270q北にあるバタン島まで、4つの島経由で渡りました。 しかし、その後は台湾、石垣島、宮古島というように島伝いに飛来したのではなく、バタン島よりバシー海峡を渡りそれぞれの島に直行したようです。
しかし、バタン島から台湾でも約300q、 石垣島までは499q、そして宮古島までは591qもあります。
下の地図は、「移住バッタの調査並びに駆除顛末」に掲載された飛来コースです。

 

 
空を黒く覆ってしまうほどの大群が、どのようにして海上を長距離飛ぶことが出来たのかについては、まだ良く分かっていないようです。

1928年5月にフィリピンで大量発生したバッタの群れは、5月21日から27日にかけ宮古島各地を襲いました。

最初に襲われたのが来間島でした。当時、来間島の人口は約350人、わずか66戸の小さな集落でした。 そこに、数百万匹のトノサマバッタの群れが、飛行機のエンジンのようなごう音と共に襲ってきました。

来間島では島民全員が協力し、葉の付いた木の枝や、棒に布きれを巻いてバッタの群れを追い続け、数日で島から追い出すことに成功しました。
しかし、来間島を追われたバッタの大群は、今度は宮古島の東仲宗根の耕作地を襲いました。

東仲宗根でも、村人総出で木の枝や石油缶など大きな音の出る物をたたき続け、必死にバッタの群れを追い払いましたが、粟などが食べつくされ大きな被害が出ました。

バッタが次に向かったのが伊良部島でした。 当時の伊良部島の世帯数は約1270戸で人口が7,400人でした。 伊良部島でも畑作物が食い荒らされ、大きな被害が出ました。

ところが、バッタの群れはその多くが伊良部島で死滅し、生きていたバッタもその後どこに向かって飛んで行ったのかがわかっていません。
 

 
今も世界中で行われているバッタやイナゴの大量発生に関する研究でも、大量発生のメカニズムと発生防止の方法は解明出来ていないようです。

宮古島を襲った大量のトノサマバッタは、どのような飛行テクニックを使ってフィリピンから宮古島までの591qを飛び続けることができたのでしょうか?

伊良部島で生き残り、島を飛び立ったトノサマバッタの運命はその後どうなったのでしょうか?

事件から90年ほど経っても、解けない謎が残ります。
 
 
トノサマバッタの飛ぶ力はとても強い:
トノサマバッタの飛ぶ力が強いのは、羽根の構造がとても強いからです。
遠くに飛ぶための大事な要素である空高くまで昇る力があり、集団で移動するときは300m以上、時には1000mの高さを飛ぶ時もあるようです。
また、1日の飛行距離は平均100km位ですが、海上では風を利用し相当早く目的地に到着することもあります。

 
トノサマバッタの食欲はどのくらいすごいのでしょうか?:
1万匹のトノサマバッタが1日に食べる穀物や野菜の量は、人の食べる量に換算すると9人分にあたるそうです。
「移住バッタの調査並びに駆除顛末」 のトノサマバッタの挿入画
 
 
参考資料:
1. 移住バッタの調査並びに駆除顛末 台湾総統府殖産局 昭和8年(1933年)
2. Uvarov, B.P., Locusts and s (1928)
3. Lean, O.B., Ent. Research, XXII (1931)
4. Faure, J.C., I.c. XXIII (1933)
5. FAO. 1994. Desert Locust Guidelines (five volumes). Rome: FAO. Pedgley, D. (ed). 1981
6. Desert Locust Forecasting Manual. London: Centre for Overseas Pest Research, Steedman, A. (ed). 1990
7. Locust Handbook (3rd edition). Chatham: Natural Resources Institute
8. Uvarov, B. 1966. Grasshoppers and locusts, Volume I. Cambridge: University Press
 

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